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司会者ブログ

2024.09.21

披露宴当日のヒアリング

(司会:前田 明日香さんより)

結婚式の司会は新郎新婦との打ち合わせが8割と言われるほど、
実は当日マイクを通してアナウンスすることよりも事前準備がとても重要です。
一見大変そうに聞こえるかもしれませんが、結婚式の司会者をやっている方のほとんどは
この新郎新婦との事前準備の一つ「打ち合わせ」が大好物!
約1時間お二人とお話をさせて頂く中で、進行内容はもちろんのこと、
初めて会う目の前のお二人が
小さい頃どんなお子さんだったのか・・・
どんな学生時代をお過ごしになったのか・・・
なぜそのお仕事をお選びになったのか・・・
そしてそんなお二人はどうやって出会って恋に落ちたのか・・・
1時間じゃ足りないくらい盛り上がります。

そして迎える当日。
頂いた打ち合わせ内容やご希望されているパーティーのイメージなどを
当日の温度感や、いらっしゃるゲストの顔や表情を観察しながらすり合わせをしていき
さらにそこで当日にしか現れないちょっとした瞬間を言葉にして伝えていき調合する。
その「当日にしかわからない瞬間や表情」を言葉にして伝える事も
事前準備と同じくらい感動のシーンを生みます。

ここで二つ当日ヒアリングした事、
見逃さなかったゲストの表情のおかげで素敵な時間になったシーンを紹介します。

小さい頃からとっても可愛がってくれた大好きなおばあちゃんを
サンクスバイトで登場してほしい新婦ちゃん。
サンクスバイトは「ありがとう」の思いを込めてウェディングケーキ入刀後に
ゲストへケーキを食べさせる演出です。

指名されたゲストはケーキの元へとお進み頂き食べさせてもらうのですが、
おばあちゃんはなんと91歳。
お元気なおばあちゃんでしたが、前に出てきてもらってケーキを食べてもらうだけでも大仕事かな・・と思い、
おばあちゃんへのインタビューはご提案しませんでした。
新婦から事前に頂いているおばあちゃんへの感謝のお気持ちはマイクを通して司会からお伝えできますが、
そのおばあちゃんの気持ちも新婦は絶対聞きたいはず・・・
そう思い、披露宴当日の挙式直後、なにげなくおばあちゃんの元へと話をしに行きました。
「おばあちゃん、今日は新婦の晴れ姿ごらんになっていかがですか?」と。
すると、目をくしゃくしゃにして笑い、そして涙を浮かべながら、
か細い声でただただ「とってもうれしいです」とお答えくださいました。
あの時の表情・・・あの時の一言・・・思い出すだけでも涙がでます。

サンクスバイト本番。
おばあちゃんがケーキ前へ新婦の隣にゆっくりと到着しました。
目を合わせるだけで泣きそうになっているお二人に向けて
先ほど挙式後に交わした会話と表情をお伝えしました。
それはそれは素敵なシーンでお二人が言葉を交わすことはなくても想いが通じて
笑顔と涙が止まりません・・・
目の前にそんなお二人の様子をずっと見守っていた新婦のお母様(おばあちゃんの娘さん)のことも見逃しません!
「新婦のお母様~お傍で見守ってくださってますね・・嬉しいですね~」
うんうん、と頷きながら動画を撮影しながらお母様も涙を流していらっしゃいました。


こんなシーンもありました。
ある新郎は「中座のエスコート」なんていらない、一人でいい・・でした。
もちろん決まりはないので、お一人で退場される方も多くいらっしゃいます。
ですが、この時の新婦は中座エスコート役にサプライズでお姉様を指名されました。
小さい頃からとっても仲が良く、今でも旅行や推し活に二人で行くほど。
なので、お姉様にはご登場いただいたらインタビューもして大いに盛り上がるだろうとイメージはばっちり。

さて、新郎。
せっかくなら新婦に合わせて弟様はどうですか?と提案したところ、
ちょっと雲行きが怪しく、「う・・・・・ん、あんまり仲良くないんです」と。
ほほう、でも小さい頃は仲がよかった?と聞くと
「はい、、、でももう、数年口きいてないですね」
そんなこんなでしたが、新婦からの後押しもあり、
「歩くだけなら・・・」としぶしぶ承諾してくださいました。
しかもサプライズ・・・いやサプライズのほうがむしろいい!BY司会&新婦

さて、ここからが司会の醍醐味。
私だけが知っている瞬間、表情を虫取り網ですくうように当日観察しています。(怖い...)
披露宴当日の乾杯後の歓談中です。
司会台の目の前が新郎ご家族席だったので、特によく見える場所にいらっしゃった新郎弟。
あれ?聞いていたイメージとはちょっと違うな・・・
よく笑う方だな・・・
楽しそうにしているなぁ・・・
ちょっとお話してみようかな・・・
「弟様!今日はお兄様の結婚式どうですか?楽しんでますか?」
するとどうでしょう弟様、わたしにだけコソコソお話するかのように
「いやーーーぶっちゃけ、めっちゃ嬉しいです。実はあんまり仲良くないとか言われたりするんですけど、僕、兄の事すごく尊敬してるんです。仕事とか。小さい頃はよく遊んでたんですけどね」って!

はいキターーーーーーーーーーーーーー!!!
待ってました、弟様!ありがとう弟様!
もうそれだけで十分です!

新郎中座シーンになり、司会からお呼び出し。
「弟様・・」と呼ぶ前に、実は・・・といって先ほどヒアリングしたお言葉とその時の表情をお伝えし、
「そうなんです、もうお分かりですね、弟様エスコートお願いできますか?」と呼んだところ、
なんということでしょう、泣きながら弟様登場してくださいました。
え?そんなふうに思ってたの?と心の中できっと安堵してくださっている新郎の表情も嬉しそう!
もうインタビューなんていりません。
その時の新郎と弟様。手もつながず腕も肩も組まず、ただただ扉まで歩いただけでしたが、
新郎ご家族の皆さん全員お席を立って泣きながら拍手・・・

男同士面と向かって話せないこと沢山ありますよね。いろんな事があったと思います。
でも、新郎と弟様、そしてご家族に伝わればいいのです。
でもその感動は伝染して新婦ゲストも涙、涙、涙・・・・・
今でも心に残る大切なシーンです。


披露宴にとっても重要な当日のヒアリング。
そして、事前に沢山お打ち合わせで準備できたからこそ
当日180度違うシーンになっても素敵なシーンへと変えることができるのが
司会のお仕事だと思っています。